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高森明勅
2022.1.28 09:00皇統問題

天皇・皇室=憲法1章適用、国民=同3章適用という区別

私は先日、
「憲法における皇室と国民の“区別”についてシンプルに整理する」
というブログを公開した(1月17日)。
https://www.a-takamori.com/post/220117

「皇室の方々(天皇・上皇・皇族=皇統譜に登録)は
憲法第1章が“優先的”に適用される。
よって、第3章に禁止規定がある『門地による差別』や
『性別による差別』(第14条第1項)などが
(第1章の象徴制・世襲制に必要とされる範囲内である限り)
そのまま該当することは“ない”、というのが憲法それ自体の
建て付けだ。」

「一方、旧宮家系子孫を含む国民の中の『皇統に属する男系の男子』
(戸籍に登録)は皆さん当然ながら“純然たる国民”なので、
憲法第3章の全面的な適用を受ける。

だから、そこで禁じられた『門地による差別』
『性別による差別』などは許されない」
至ってシンプル。

しかし、この点がきちんと整理できていない人を時折、
見掛けるので、“念の為に”記した。

支離滅裂な「産経抄」

ところが、それから余り日を空けないで、憲法が禁じた
「門地による差別」などに該当する政府の養子縁組プランを擁護したい余り、
支離滅裂になっている文章に出くわした(産経新聞1月22日付「産経抄」)。

「皇族は、日本国民であるにもかかわらずさまざまな制約を受けている」
(→同じ国民〔!?〕なのに不平等)

「憲法14条の『法の下の平等』を一律に厳格適用するならば、
現行憲法そのものが憲法違反にならないか」
(→皇室の方々だけ特別扱いなので)

これを書いた記者は、憲法の「仕組み」自体が分からないのに、
憲法論を振り回してしまったようだ。

国民への「一律」適用は当然

皇族が第3章の全面的な適用を受けないのは、
国民とは“区別”された第1章の優先的適用を受ける「特別な存在」
だからであり、それは憲法そのものの要請による。

だから、「皇族は日本国民であるにもかかわらず」ではないし
(→皇室は憲法上、特別な存在)、「現行憲法そのものが憲法違反」なんて
頓珍漢な話でも勿論ない(→憲法自体が特別扱いを求めている)。

一方、養子縁組プランの対象として想定されている人々は
純然たる「国民」なので、当然、第3章を「一律に厳格適用」する必要があり、
(皇族のような制約を免れ、様々な自由や権利を保障されている一方)
門地・性別などによる「差別」は明確に「憲法違反」になる。
至ってシンプル。

ちなみに、これを書いた記者は立憲民主党の
馬淵澄夫国会対策委員長の発言への批判として憲法論に言及しているが、
その発言が憲法学の世界で評価が高い宍戸常寿東京大学大学院教授の
所説に依拠していることに気付いていないようだ。
失礼ながら「…蛇におじず」という諺を思い出す。

なお、保守系の憲法学者で国士舘大学特任教授の百地章氏が
養子縁組プラン違憲論に対し懸命に釈明を試みておられる
(産経新聞1月21日付)。

さすがに、ここで引用した記者ほど酷くはないし、
又そのご熱意には素直に敬意を表したい。
しかし残念ながら、縁組みプランの擁護に成功しているようには見えない。
これについては改めて。

追記

「『“悠仁さまがいるから”議論は先延ばし』
政府が出した白紙回答に専門家が読み取る“ある疑惑”」
という私の見解を載せた記事が「プレジデントオンライン」で
本日(1月28日)公開予定とか。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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